新作能「長崎の聖母」ながさきのせいぼ
2015年5月、アメリカ ニューヨーク、ボストンにて公演を行いました。
公演の詳細・清水寛二の文章・メディア掲載報等をまとめています。
2015年5月、アメリカ ニューヨーク、ボストンにて公演を行いました。
公演の詳細・清水寛二の文章・メディア掲載報等をまとめています。
長崎の聖母
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舞台は長崎・浦上天主堂
巡礼者の前に現れた女が被爆の有様を語る 女は聖母マリアか被爆者の霊か 津和野から巡礼者(ワキ)が長崎・浦上天主堂を訪れる。 天主堂の修行僧(アイ)に、巡礼者は原爆の有様を尋ねる。その日天主堂では多くの信徒が犠牲となった。マリア像も聖堂も焼け落ち、町は火の海となり、この世の終わりのようであった。後にマリア像は頭だけが見つかり、「被爆のマリア」と呼ばれている・・・・。 二人が犠牲者のために祈っていると、聖歌と共に女(シテ)が現れる。被爆者の霊か、聖母か。女は「原爆の悲惨を忘れるな、聖母マリアの慈悲を伝えるために来た」と言い、原爆の夜、名も知らぬ信女が傷ついた人々を助けたさまを語る。そして、犠牲と世のすべての人々の平和を祈り、舞を舞い、アンゼラスの鐘とともに姿を消していく。 (チラシより転載、一部追記。2015年ニューヨーク・ボストン上演用に一部改変しています。) |
公演詳細
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現代能「長崎の聖母」 アメリカ公演
公式HPはこちら(外部サイト) 【ニューヨーク公演】 演目:『清経』『長崎の聖母』 日時:5月14日(木)~16日(土) 19時開演 会場:ニューヨーク ジャパンソサエティ(333 East Street New York,NY) 【ボストン公演】 演目:『長崎の聖母』 日時:5月20日(水) 19時開演(入場無料) 会場:昭和女子大学レインボーホール(420 Pond Jamaica Plan,MA) 【ワークショップ】 日程:5月15日 会場:NY州立大学ストーニーブルック校ワン・センター 日程:5月18日(月) 会場:ダナ・ファーバーがん研究所病院 日程:5月19日(火) 会場:マサチューセッツ工科大学 【主な出演者 他】 シテ/聖母マリアか被爆者の女か 清水寛二 ワキ/津和野からの巡礼者 殿田 謙吉 アイ/浦上天主堂の修行僧 小笠原 匡 笛 松田 弘之 小鼓 飯田 清一 大鼓 白坂 信行 太鼓 田中 達 グレゴリオ聖歌 ニューヨーク:聖フランシスコ・ザビエル協会聖歌隊 ボストン:聖パウロ修道女聖歌隊 後見 浅見 慈一、安藤 貴康 地謡 西村 高夫、柴田 実、中所 宜夫 北浪 貴裕、小早川 修、長山 桂三 ※ボストン公演では、後見、地謡に一部変更がございます。 舞台監督 小坂部恵次 照明 齋藤茂男 |
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「『長崎の聖母』『清経』アメリカ公演に寄せて」オフィスしみかん春のDMより
原爆が広島・長崎に落ちてから70年たちました。しかし、いまだ核兵器はなくならず、世界に争いも絶えず、被爆者の方々の心も癒されません。 長崎の原爆の能『長崎の聖母』(作・多田富雄、演出・清水寛二)を、今回用構成版にて、アメリカ・ニューヨーク及びボストンで上演いたします。 この作品は2005年長崎・浦上天主堂においての初演(主催長崎純心学園・浦上天主堂)以来各地で上演を続けて参りましたが、長崎の方々よりの「国連の5年ごとのNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向け、アメリカの市民の方々へ平和を訴える活動の一環として、ニューヨークにてこの能を上演したい」という提案を受け、100年以上もの間ニューヨークで日本文化を発信しているジャパン・ソサエティが、戦後70年にあたり戦争を考えるという今シーズンのプログラムの中に三日間の『長崎の聖母』公演を組み、戦によって引き裂かれた一組の夫婦を描く世阿弥作の名作『清経』を併演して、古今の作品を以って人間にとっての戦争を考える企画となりました。 またアメリカ合衆国建国の都市ボストンでは、同じ多田富雄作の新作能『一石仙人』(アインシュタインが相対性理論を説き、核を戦に使用するべからずと言う)を上演すべく、2007年以来美術館や大学などで能のワークショップを重ねてきました。『一石仙人』の上演には至りませんでしたが、今回ここでも多くの方々のお力により『長崎の聖母』を上演する運びとなりました。 『長崎の聖母』の舞台・浦上天主堂は、近代になっての激しい弾圧を経て建てられ、そして原爆で破壊されました。再建された御堂では、今も人々が平和のため祈り歌っています。この能の中ではグレゴリオ聖歌が歌われますが、今回ニュ-ヨーク・ボストンそれぞれに現地の教会の聖歌隊の皆さんが歌ってくれます。 長崎では、町衆の祭礼「おくんち」で有名な諏訪神社において、長崎を言祝ぐ能『諏訪』を江戸時代毎年上演していましたが、江戸末期以来絶えていました。実は、その『諏訪』の復活上演(1997年)の時の長崎市民の方の「原爆の能はできんとやろか?」という声が、この『長崎の聖母』を作るきっかけになりました。そして今回は特別な計らいで、諏訪神社に江戸時代より伝わる能面が、教会に現れる被爆者の霊(あるいは聖母マリアか)の役のために、初めて海を渡ります。 近代文明の果て、原爆の落ちた悲惨な実際の光景は、能では到底再現できるものではありません。しかし、個の命を慈しむという思想に包まれている能によってあらわされる世界があるはずです。 公演のほかに、いくつか能のワークショップも行い能の魅力の紹介もしてまいりますので、多くのアメリカの市民の方々・若い方々に、『長崎の聖母』や能にふれて頂きたいと思います。日本からも見に来てください。そして、応援してください。お待ちしています。 |
メディア掲載情報・
お知らせ |
東京新聞 2015年8月7日
<能楽>能で「長崎の原爆」 惨状、平和の祈り 世界に発信 2015年8月7日 長崎の原爆をテーマに、悲惨な光景、平和や再生の願いを描く「長崎の聖母」という能の作品がある。シテ(主人公)に加え、演出も手掛ける観世流の清水寛二が折に触れて上演してきた。戦後七十年の今年は五月、米国公演を成功させ、十一月に長崎で開く核兵器廃絶を目指す「科学と世界問題に関する会議」(通称パグウォッシュ会議)の一環行事として上演も決まった。能で原爆の悲惨さと平和の祈りをどう表現するのか。 (藤浪繁雄) 通常の能舞台と異なり、老松が描かれた鏡板ではなく十字架が立つ。囃子方(はやしかた)や地謡も配置されるが、グレゴリオ聖歌が厳かに流れ、キリスト教文化も色濃い長崎の異国情緒が漂う。 長崎・浦上天主堂を訪ねた現代の巡礼者と天主堂の修道僧が、原爆犠牲者に祈りをささげていると、清水が演じる「女」が現れる。惨状を生々しく語る一方、聖母マリアの慈悲が鎮魂の思いを伝える。女は被爆した女性かマリアなのか-。観客の想像力をかき立てていく。 免疫学者で文筆家の多田富雄さん(一九三四~二〇一〇年)の作品。多田さんは広島の原爆や沖縄戦を扱った新作能も手掛けていて、「長崎」は“戦争三部作”の一つ。二〇〇五年浦上天主堂で初演した。 「光は六千度の熱を伴い。地獄の業火のごとく地上を襲えば」「人は石に影を刻まれて。形は消えてあともなし」…など、原爆の惨禍を表現。「破壊と争いの世を打ち捨てて。永久の命をともに与えられ」…とメッセージも添えている。 ◇ 「実験を除き、投下された原爆は長崎が最後。最後のままであってほしい」 清水はこんな思いで作品と向き合う。埋もれていた能の復活などに携わり、その縁で長崎の住民から「原爆の慰霊に関する能ができないか」と相談され、「生命を科学的に考えながら、文学的な感覚で表現する」多田さんに作品を依頼した。 五月に米ニューヨークとボストンで、初めての海外公演を成功させた。反核や平和を唱える長崎の人たちから「自分たちの声がうまく世界に伝わっていないのでは」と懸念する向きもあり、「悲惨さを誘うだけでなく、長崎の文化にも触れながらではどうか」と考えた舞台だった。 「現代の日本人には『能は難しい』とイメージされがちだが、米国人には『見てみたい』と純粋に興味を持ってもらったようだ」と清水。現代演劇に比べて、能は様式化され、舞台の設備も少ない。しかも、演目ではシテの「女」は能面を着け、表情も分からない。過去と現代の時空を超えた内容は、想像力が必要。それでも「訴えかけてくるものがあった」との感想が寄せられるなど観客の思いを感じた。「被爆した女性=聖母マリア」ともとれる解釈にも批判はなかったという。 米では約一時間半の作品を約五十分に短縮。パグウォッシュ会議(十一月一~五日、長崎市内)の一環でも短縮版を披露する。平和への思いだけでなく、能の魅力を世界に発信できる好機。「外国の人たちにも通用する能。今後は若手の能楽師たちにも上演してもらいたい」。その目は世界を見据える。 <パグウォッシュ会議> 正式名は「科学と世界問題に関する会議」。哲学者ラッセルと物理学者アインシュタインらが戦争と核兵器の廃絶を訴えた1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」をきっかけに始まった国際科学者会議。第1回は57年にカナダ・パグウォッシュで開催され、軍縮や国際平和問題を討議している。95年にノーベル平和賞。日本では広島市で2度開催された。 元の記事はこちら(外部リンク) |
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シリーズ 戦後70年 語り継ぐ「記録と記憶」
原爆が投下された長崎県にある浦上天主堂を舞台に、被爆からの再生と平和をテーマにした新作能「長崎の聖母」(作/故・多田富雄さん)。同作品のシテ(=主人公)を務め、演出も手掛けるのが、緑ケ丘在住の能楽師・清水寛二さん(62)だ。今年5月には、アメリカ・ニューヨークとボストンで初の海外公演に挑戦。2005年に初演してから10年が経ち、平和を希求する活動は海外へと拡がりを見せている。 第5回 平和の尊さ、能で伝える 浦上天主堂は、1925年に創建された教会。原爆の爆心地から約500mに位置しており、爆発によって頭部のみになった「被爆マリア像」など原爆遺構が数多く点在する。 長崎の聖母は、キリスト教と原爆に関わりの深い浦上天主堂を舞台に物語が展開する。前半では、被爆者を懸命に助ける女性の姿が語られ、後半では聖母マリアが犠牲者を慰め平和への祈りを捧げて天国に昇天する様子が描かれる。清水さんは、主役の女性と聖母マリアを演じている。 創作のきっかけは、十数年前。長崎の神社で途絶えていた能の復元に携わった時、地元住民から「原爆の犠牲者を慰霊する作品も作ってほしい」と打診された。能という伝統文化に現代の出来事を盛り込む難しさがあったが、広島の原爆に関する能も手掛けた文筆家・多田さんに創作を依頼し、清水さんは完成した台本をもとに編集に着手した。「被爆するとは、どのような体験なのか」――。資料では窺い知ることができない「温度」を肌で感じるために、長崎の街を歩きまわったという。 初の海外公演、世界に拡がり ニューヨークは日米交流団体のジャパンソサエティーが、ボストンは日系経営者コミュニティのJREXなどがそれぞれ主催した。 海外公演にあたり、1時間30分ほどの作品を50分に短縮したほか、グレゴリオ聖歌を歌う場面では現地聖歌隊に協力を依頼。開演前には「被爆マリア像」の写真も紹介した。観客からは「原爆は戦争を終わらせるために必要だったと教えられたが、間違っていた」という声も挙がったという。 11月には、核兵器廃絶を目指す科学者が集う世界大会「パグウォッシュ会議」(会場/長崎)にも出演。5月に続き、再び世界に発信するチャンスを得た。今後は、次世代継承も大きな課題だ。「多くの人に上演してもらい、もっと拡がっていけば」と話している。 (タウンニュース座間版 2015年7月17日号より) 元の記事はこちら(外部サイト) |
カトリック長崎大司教区HP 2015年6月4日
『長崎の聖母』アメリカ公演の田上長崎市長への報告会 [本文より一部抜粋] 公演では、米国人を中心とする観客のために英語の字幕が準備されたが、聖母を演じた観世流銕仙会の能楽師・清水寛二さんによると、「字幕を見る方はあまりいなくて、(演じている)こちらの方を集中して観ていただいている感じだった」という。 田上市長は、「こういう伝え方もやはり大事。よかったと思う」と話した。 記事全文はこちら(外部サイト) ロイター通信WEB版 2015年5月18日
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終戦から70年、ニューヨークで能上演の意味(18日)
(04:54) ニューヨークにある日本文化を発信する米NPOジャパン・ソサエティーでは、戦後70年の今年、さまざまな関連イベントが企画されている。5月14日、15日、16日の3日間は、新作能「長崎の聖母」と古典「清経」が上演された。終戦から70年、ニューヨークで能を上演する意味を、観世流シテ方能楽師の清水寛二氏に、ロイターの我謝京子がインタビューした。 ※動画はこちらからご覧いただけます(外部サイト) |
現代能で核廃絶訴え、NY 「長崎の聖母」公演
14日、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで上演された現代能「長崎の聖母」(共同) 【ニューヨーク共同】原爆を投下された長崎の浦上天主堂を舞台にした現代能「長崎の聖母」の公演が14日、ニューヨークの日米交流団体「ジャパン・ソサエティー」で開かれた。芸術を通じて米市民に原爆の悲惨さと核廃絶の緊急性を伝えた。 16日まで上演。道路を挟んだ国連本部では核拡散防止条約再検討会議が開かれているが、米メディアの関心は低い。少しでも市民に核廃絶の取り組みに目を向けてもらおうと、元長崎大学長の土山秀夫さんらが実現させた。 作品は長崎で被爆した人たちを助けた女性が一夜明けると一輪の白い花に変わっていたという内容で、免疫学者で能作者の故多田富雄さんが制作。 元の記事はこちら(外部サイト) |
カトリック新聞 オンライン版 2015年5月8日
現代能『長崎の聖母』、米国公演へ 戦後70年に当たり、長崎の原爆を題材にした現代能『長崎の聖母』が、米国ニューヨークとボストンで上演されることになった。 能『長崎の聖母』は、免疫学者で文筆家だった故・多田富雄さんの作品で、2005年に長崎・浦上教会で初演。以来、各地で上演されている。 物語は、島根の津和野から巡礼者が長崎の「浦上天主堂」を訪れる。津和野は明治初期のキリスト教徒の迫害「浦上四番崩れ」で、浦上の信徒らが流された殉教地の一つ。 「天主堂」の「修道僧」に、巡礼者は原爆の有様を尋ねる。2人が犠牲者のために祈っていると、聖歌とともに女が現れる。その女は、原爆の夜、名も知らぬ信女が傷ついた人々を助けたさまを語る。そして平和を祈り、舞い、アンゼラスの鐘とともに姿を消す。 今回の公演では、長崎・諏訪神社に江戸時代から伝わる能面が用いられる。 また、能の中ではグレゴリオ聖歌も歌われるが、聖フランシスコ・ザビエル教会聖歌隊(ニューヨーク)と聖パウロ修道女会聖歌隊(ボストン)が協力する。実行委員には、高見三明大司教(長崎教区)や片岡千鶴子修道女(純心聖母会)、田上富久市長(長崎市)も名を連ねている。 『長崎の聖母』でシテ(主人公)を演じるのは清水寛二さん。長崎の人たちから米国での上演をとの提案を受けたという。今回は「長崎の聖母」と併せて、源平合戦で引き裂かれた一組の夫婦を描く世阿弥作の名作『清経』も上演し、古今の作品で戦争を考える企画とした。 清水さんは、「原爆が広島・長崎に落ちてから70年たちました。しかし、いまだ核兵器はなくならず、世界に争いも絶えず、被爆者の方々の心も癒やされません」と、米国公演を前にコメント。さらに、「(今回は現地の)聖歌隊の方々がグレゴリオ聖歌を歌ってくださいますので、大変楽しみです」と話している。 公演は「ニューヨークジャパンソサエティ」と「ボストン昭和大学レインボーホール」で行われる。 元の記事はこちら(外部サイト) |
2015 NAGASAKI WEEK IN NEW YORK
現代能『長崎の聖母』と古典能『清経』 日時 2015年5月14日~16日 全3回公演(各回ともに19時30分開演) 会場:Japan Soiety(ニューヨーク市) 料金:62米ドル チケットのお問い合わせ Japan Society (212) 715-1258(ニューヨーク市) 詳細はJapan Society WEBサイトをご覧ください。 「募金のご協力のお願い」より 2015年は長崎が原爆で焦土となった日から70年です。この間、長崎市民も核兵器廃絶と世界平和構築に取り組んできました。ニューヨーク国連本部で行われている「NPT(核拡散防止条約)再検討会議」でも市長スピーチや原爆展を行ってきましたが、多くのアメリカの市民にとって原爆は、戦争を終結させ、日米両国の多数の若者の命を救った平気で、必要だったという評価が未だ一般的です。このような中、被害を強調するだけでは「アメリカの過去の行為の一方的な批判」と捉えられ、核廃絶のメッセージがかき消されてしまいかねません。 しかし、原爆で破壊された都市はアメリカと深い歴史的関係があり、そこに暮らした人々もアメリカ市民と同じように笑い、働き、祈り、おしゃべりに興じた人々であったことに気づいてくれるならば、その人々が受けた災禍をもたらした核兵器に対し、アメリカの市民が再考するきっかけとなり得ます。このような視点から、長崎という都市、そこに暮らす人々に共感を持って貰うよう、日本の伝統文化である「能」という形式をとり、長崎を舞台とした演目を見て貰い、核兵器廃絶への関心を高めて行きたいと考えています。 |